時期が来たので仮想通貨の会計について語ります

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仮想通貨の「雑所得」との認定と将来の展望

仮想通貨は「雑所得」、換金売りの引き金か(2017/9/12

www.nikkei.com

 

 仮想通貨で億単位の含み益がある人の話を聞いたら、税金を考えると売るに売れないって話だったな。大口でそういう人多そうだから、需給面で売り圧力が少ない反面、税制が改正されると一気に需給が崩れるかも知れない。

 

 仮想通貨の稼ぎって半分取られるんでしょ? 税制改正してから出直してこい

 

 

仮想通貨の利益と税率(個人)

ということで、国税庁は9月に仮想通貨の利益は雑所得ということを発表していますね。

個人の場合ですが、税金はおおよそ下記のようになります。

仮想通貨の利益と税率(個人)f:id:n_siu:20171015231413j:plain

仮想通貨(暗号通貨)で利益が出た場合の税金はいくら払うのか? | 貯金1000万を仮想通貨に換えた男のブログ より

 

この発表を受けて、「最大税率50%超」「利益確定したらほとんど税金で持っていかれる」というような声も聞かれましたが、上記のとおり、利益額によって税率は変わってきますので「無条件に利益の半分以上が持っていかれる!」というわけではありません。

細かい計算は専門家の方にお譲りしますが、雑所得扱いですのでみなさんのお給料などとの合計金額で税率が決まります。

税率だけでなく損益の通算や損益繰越にも注意
通貨間の損益の通算はできるが、損益の繰越はできない

 ということで、現在は雑所得となっている仮想通貨ですが税率だけでなく、損益の通算の可否や、損益の繰越にも注意が必要です

 

損益通算は仮想通貨でも可能

損益通算という観点では、株やFXなどでは、株式の利益・配当と損益、FX取引の利益と損益を相殺して利益額を計上することができます。

これに対し、仮想通貨の場合も複数の通貨の損益を通算はすることができると考えられます。

 

損益繰越は仮想通貨では不可

損益繰越という観点では、株やFXなどは、1年間の通算で損失を出した場合、向こう3年間損失を繰り越すことができます。(たとえば、今年50万円の損失を出してきちんと申告した場合、翌年50万円の利益を出しても前年の損失と相殺できます。)

これに対し、仮想通貨の場合はこれが認められません。今年損失を出したとしても、翌年以降に繰越ができないのですね。

あくまでも上記は現時点の筆者の整理ですので確定申告などのときには税務署の方、税理士の方に確認をお願いします。

 

引続き今後の税制の変化に注目

さて、ここまでが現時点での税制となります。すこし、今後の話をして見ましょう。
例えばFXの税制。こちら、いまとなってはFXの利益に対する税率は一律20%、損益の繰越も認められています。しかし、FXも過去は上記のような雑所得扱いであった時代がありました。FXで一律20%の税率、損益の繰越が認められたのは2012年のことで結構最近のことなんですね。

zai.diamond.jp

 

FX上記のような税制が認められるまでには、FX取引業者や一般投資家の働きかけが背景にあったといわれています。仮想通貨についても、仮想通貨取引業者や一般投資家の働きかけなどによって同様の流れをたどることもあるのではと予想しています。

ということで、仮想通貨に対する税制については、引続き流れを見守っていければと思います。


最後にここまでの記述はあくまで筆者の理解、予想ですので、実際の納税、投資その他諸々の経済活動を行われる際には、ご自身の自己責任にてなにとぞよろしくお願いいたします。