時期が来たので仮想通貨の会計について語ります

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わずか4%が、ビットコインの97%を所有 という言葉の誤解について

 

 

 

「わずか4%が、ビットコインの97%を所有」という言葉の与える誤解

「わずか4%が、ビットコインの97%を所有」というのを読んで、

「全体のうち4%のビットコインユーザが97%のビットコイン保有してるのか」
「くぅー、先行者利益半端ないな・・・」
「仮想通過の世界にも持つものと持たざるものの差が・・・」

などと考えたのですが、

どうやらこれは誤解だったようです・・・

 

本文をよく読むと、
「4%のアドレスが97%のビットコイン保有している」
とかかれているわけですね・・・

そこで、冒頭の可能さんのTweetに戻ります。

 「これは正確ではありません。取引所のCOLDウォレットや、金庫サービスに使用されるアドレスがあるので、そこに大量の顧客資産を保管してます。1アドレス=1顧客と考えるのは間違いです。」

なるほど、そういうことだったのですね!
上位4%のアドレスには、仮想通貨取引所や、仮想通貨サービスが保持している「利用者のビットコインをまとめて保管しているアドレス」が一定数含まれているんですね。モヤモヤが解けました!

仮想通貨取引所や金庫サービスのビットコイン保有の方式に要因が・・・

私も仮想通貨取引所等のサービスにお仕事で関わらせていただくことがあるのですが、

例えば仮想通貨取引所の場合、顧客が100万人いたとして、100万個のビットコインのアドレス保持して、1ユーザに対して、1ビットコインのアドレスをアクティブに使用しているかというとそんなことはないんですね。

イメージとしては、アクティブに動いているのはせいぜい数千アドレス、ビットコインが常に入っているのは数十~数百アドレスというふうに考えています。

図にすると下記のような感じでしょうか。
資産の多くはネットにつながっていないコールドウォレット(数個程度)に集中して保管されていて、それ以外に複数のホットウォレット(数十~数百個)に当面使用する可能性がある額を保持しているという感じです。(数字は大まかなイメージ)

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 上記のような仕組みなので、例えば私が仮想通貨取引所に預けている1BTCは、私専用のアドレスに保管されているわけではなく、上記の残高が入っているウォレットのどれかに保管されているということになります。

 

アドレスの上位4%のアドレスは仮想通貨取引所などのアドレスが多く含まれている?

前述のような事情もありますので、上位4%のアドレスには、仮想通貨取引所や、仮想通貨サービスが保持している「利用者のビットコインをまとめて保管しているアドレス」が一定数含まれていると考えるのが妥当です。

そう考えると、冒頭の記事のクレディ・スイスのアナリストの指摘が上記のような事情がまったく考慮せずに、
「わずか4%が、ビットコインの97%を所有」といっていることがわかります。

 

なぜそんな仕組みにしているのか?

ということで、冒頭のもやもやは解消されたわけですが、なぜそうなっているかについても考えてみましょう。
ポイントとしてはセキュリティウォレット管理と考えられます。

セキュリティのいう観点ではビットコインのウォレットをインターネットに接続させておくということ自体が、一定程度のハッキングリスクにさらされることにつながります。ですので、金額の多くの部分はコールドウォレットに保管しておいて、コアメンバーのみが秘密鍵情報を保持するという方式がとられているのでしょう。

 

ウォレット管理という観点では、アクティブなウォレット数が数万となってくると管理が煩雑にならざるを得ないというのがあげられます。特に昨今は、仮想通貨の分別管理(と定期的なチェック)が求められていますので、使用するウォレット数を抑えることで管理コストを抑えるという意図があるのでしょう。

ということで、「ビットコインについて特定のユーザがビットコインの大部分を保持している」といっている背景にはこういう事情があるということを説明してみました。
「じゃあ、本当のところビットコインはどういう分布になっているの?」というのが気になるところですが、機会があれば考察してみたいところです(かなり骨が折れそうですが・・・)

ま、ビットコインの保持者に偏りがあろうがなかろうが、私のビットコイン資産が増えるわけではないのですけどね・・・